5歳になる息子は、大のお絵描き好き。
暇さえあればクレヨンやクーピーを握り、何かを描いています。
でも、実はもともとは自分ではまったく絵を描かない子でした。
クレヨンを親に渡しては、「かいてー」と言うだけ。
お絵描きは好き。
でも自分では描かない。
どうしてだろう・・・?
リクエストされるアンパンマンや昆虫の絵を描きながら、いつも悩んでいました。
それが今では、一日何枚もの絵を幸せそうに描いています。
そのきっかけとなった出来事や、ちょっとしたヒントを、当時を思い出しながら記事にしてみたいと思います。
お友だちの言葉
アンパンマンの丸い顔を描きながら、何気なく聞いたことがあります。
「自分で描いたらいいのに。きっとうまく描けるよ」
すると息子は、わたしの手元のクレヨンを見つめながら答えました。
「ぼく、うまくないもん」
「どうして?」
「ぼくのえ、みんながへただっていうもん。へんなんだって」
保育園で絵を描いたとき、友達に言われた「下手」という言葉に、息子は傷ついていたようでした。
いつも仲良く遊んでいる友だちの名前が次々にあがり、聞いていたわたしは胸が痛くなりました。
仲良しの友だちから、ピシャリと言われてしまった言葉。
仲良しなだけに、ふざけていたのかもしれない。
でも、仲良しだからこそ、響いてしまう言葉。
この会話になるまでずっと黙っていた息子は、どれだけ悲しい思いをひとりで抱えていたことでしょう。
そして、「うまく描けるよ」なんて、適当なことを言ってしまった自分も深く反省しました。
うまい、うまくないは必要か
その後、しばらくはオーダーされるままにわたしが絵を描く日が続きました。
クレヨンと紙を持って嬉しそうに言いに来るのだから、たぶん絵が嫌いなわけじゃない。
お絵描きする時間が好きなら、それでいいし、そのうち自分で描くときが来るかもしれない。
そう思っていました。
同時に、自分の言った「うまく描けるよ」を、ずっと考えていました。
うまく描く。
うまい、うまくないって誰が決めるもの?
友だち?
自分?
うまい、うまくないって必要なの?
幼児の絵画教室などに通わせれば、技術や知識として絵を学ぶ機会もあるでしょうし、「上達」していくのだと思います。
でも、今の息子って「上達」したいのかな。
そうじゃなくって、「お絵描きが好き」という気持ちに蓋をしているものを取っ払ってあげることが必要なんじゃないかな。
気持ちに蓋をしているもの。
それは、「うまい」「へた」という意識だという気がしました。
だったら、今の段階では、そんなものいらない。
うまい絵を描いてもらうより、好きな絵を描いてもらいたい。
そう強く思いました。
きっかけは、空想の世界
当時の息子は昆虫が好きで、とりわけカブトムシが大好きでした。
たくさんの図鑑や絵本とにらめっこしながら、親も知らない外国の虫の名前を次々に覚えていました。
ある日、「ヨコハマオオアカヘラクレスがね!」と言い出しました。
ヨコハマ・・・何?
「よこはまにいる、おおきなあかい、ヘラクレスのことだよ!」
ヘラクレス、というのは海外のカブトムシの名前で、カブトムシの王者と呼ばれています。
もちろん、横浜に生息しているカブトムシではありません。
ヨコハマオオアカヘラクレス。
赤が一番大好きな息子が空想で作り上げた、最強のカブトムシのことでした。
「それ、どんなカブトムシなの?」
聞くと、息子は赤いクレヨンを握り、迷いなく画用紙に大きなヘラクレスを描き出しました。
立派なツノ。
頭・胸・腹にちゃんと分かれた真っ赤な身体。
足先のギザギザしたツメ。
なんて迫力のある昆虫でしょうか!
それまで、自分で描くことをしなかった息子が喜々として描く姿に、わたしはただただびっくりしました。
そうか。
この子は、やっぱりお絵描きが大好きなんだ。
他のものと比べられない、空想の世界の絵ならば、こんなにものびのび嬉しそうに描けるんだ。
そう感じました。
図鑑・挿絵を描いてみる
あまりにも「ヨコハマオオアカヘラクレス」が素敵だったものだから、わたしは息子に聞いてみました。
「これって、仲間のカブトムシはいないの?」
すると、息子はそこから何日もかけて、たくさんの仲間たちを描き、セロハンテープでまとめて言いました。
「ずかんできた!」
ペタペタとセロハンテープで貼った10ページ以上の小冊子。
なんと、オールページ息子が手書きした、オリジナル図鑑が完成したのです。
ついこの間まで、「自分じゃ描けない、ママ描いて!」と言っていた息子が、こんなものを作ってしまうなんて。
そこからは堰をきったように、毎日お絵描き三昧です。
ちょうど保育園の登園自粛も重なったりして、我が家のお絵かき帳は底をつき、100円ショップに毎週のように走りました。
青空文庫の活用
空想の世界だけではなく、好きな物語の絵を描くこともあります。
でも、もともとの絵があるものだと、やっぱりちょっと苦手意識が顔を出すことも・・・。
そんなとき使うのは、「青空文庫」。
自分自身が読み聞かせをしたいな、と思って調べていた、インターネット上の電子図書館です。
青空文庫のお話は、テキストのみです。
挿絵が入っていません。
そのため、先入観なく、自分オリジナルの挿絵を描くことができるのです。
青空文庫には、短編や童話などもたくさん公開されていて、自分自身も知らない物語にたくさん出会います。
挿絵を描くことで、昆虫や恐竜しか描かなかった息子の絵の幅も広がりました。
また、絵を描くために、ちゃんと物語を聞く姿勢も身に付いたように思います。
まさに、一石二鳥!
むすび
こどもにとってお絵描きは、一番身近な遊びであるからこそ、ちょっとしたことで傷ついてしまう原因にもなるのかもしれません。
好き、嫌いは個性だから、無理強いをする必要はありません。
でももし、「好きなのに描かない」のだとしたら、原因は「うまい絵」という言葉かもしれません。
うまい絵じゃないと笑われる。
うまい絵を描かなきゃいけない。
あの子はうまくて、ぼくはへた。
こどもは、大人が思っているより繊細で敏感。
だから今は、そんな呪いのような「うまい」を取っ払って、好きな絵を好きなだけ描いて欲しいなあと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、同じような悩みを持つ方の何らかのヒントになれば幸いです。
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